映画と映画の音楽  by  M・I

音楽を気にしながら映画を観る、そんな雑感

2023. 1. 12 「ケイコ 目を澄ませて」

2023 1.12 ケイコ 目を澄ませて テアトル新宿 冒頭、鏡に映る女のドUP、朝 (?) の部屋の様子、土手を走る女、荒川、鉄橋を電車が何本も通過する。’ケイコ~’ ‘’聴覚障害~’、時々無造作に入る下絵無しの文字。メインタイトルも見落としてしまうほどさりげない…

2022. 11. 28「我が青春の大森一樹」

2022.11.28「我が青春の大森一樹」 大森一樹逝く。2022. 11. 12 70歳 大森さんとの最初の仕事は「恋する女たち」(1986) だった。 その頃、僕は映画の音楽プロデューサー(東宝撮影所ではそういう役職名は無く、音楽事務と言われていた) とは何をすればよいの…

2022. 11. 25 「土を喰らう十二か月」秩父シネコン

2022.11.22「土を喰らう十二か月」秩父シネコン 人は社会性をそぎ落としていくと、食と性と死が剥き出しになる。これに正面から向き合える人はそういない。早い話がリタイアしたサラリーマン、社会で何がしかであったことを引きずる。 主人公ツトム (沢田研…

2022. 8. 2 「ノマドランド」再び  B-Ray

2022 .8. 2「ノマドランド」再び B-Ray 2021年4月6日、拙ブログにて「ノマドランド」を評した。素晴らしい映画、でも僕は音楽に疑問があると記した。B-Rayで再見した。素晴らしい映画であることに変わりはない。一度見では気付かなかった細かい発見もあった…

2021.11.05「ドライブマイカー」( 2022.1.14 二度目) テアトル新宿

2021.11.5「ドライブマイカー」( 2022.1.14 二度目) テアトル新宿 村上春樹は読んだことがない。芝居は嫌いである。車の運転もしない。この映画の感想を記すには相応しくないかもしれない。 話の核は全て台詞で語られる。その時カメラは語る役者をじっと見つ…

2022.01.25 「あのこは貴族」(2021.03.16 池袋シネリーブル)

3.16 あのこは貴族 上流階級のお嬢様を門脇麦、頑張ってK大に合格した地方の頭のよい娘を水原希子、ミスキャストではと思いながら見る内にどんどん引き込まれた。水原が故郷へ帰るとジャージに着替える。よく見りゃカッコイイのだが、それなりに田舎の子に見…

2020.01.25 「地獄の花園」(2021.06.09 日比谷TOHOシネマズ)

6. 09 「地獄の花園」 ただ口開いて見る分には今年No1だったかもしれない。永野芽郁、広瀬アリス、菜々緒、川栄李奈、大島美幸、小池栄子、室井滋等、よくぞここまで揃えた女優陣。花のOL、その裏で繰り広げられる熾烈な派閥抗争、OL版仁義なき戦いである。 …

2020.01.25 「2021年の纏め」

2021年後半のまとめ 久々のブログ。「街の上で」を最後にアップせず。映画を見ていなかった訳ではない。文章を書くのが億劫で億劫で。もともと文章書く習慣はなく、呆け防止の為と尻を叩いて書いてきた。それが、叩けど叩けど指動かず、指より頭か。面倒くさ…

2021.05.13 「街の上で」 ユーロスペース

2021.05.13「街の上で」ユーロスペース 浮気した彼女から別れ話を切り出されても、別れたくないと食い下がる、古着屋で働く荒川青 (若葉竜也) 。舞台は下北沢、「愛がなんだ」(2019 監督.今泉力哉) のナカハラ君を継承するこの主人公と、彼を巡る四人の女。…

2021.04.28「ブータン 山の教室」岩波ホール

2021.04.28「ブータン 山の教室」岩波ホール 国旗を崇め国歌を斉唱し王様を尊敬する、自然と生活と政治体制がひとつになって調和する理想の姿。本当か? かつては世界中みんなそうだったのか。人が集まれば争いが起こる。けれど人間同士争っては生きていけな…

2021. 04. 23「ミナリ」TOHOシネマズシャンテ

2021.04.23「ミナリ」TOHOシネマズシャンテ 1980年代、農業でアメリカンドリームを果たすべく、中西部アーカンソー州へ移住した韓国人一家の物語。夫婦(ジェイコブとモニカ)、まだ幼い姉弟(アンとデビッド)の四人家族。夫婦はまずロスに住み、ひよこの雌雄の…

2021.04.06「ノマドランド」TOHOシネマズ日比谷

2021.04.06「ノマドランド」TOHOシネマズ日比谷 劇場の大スクリーンで観なければいけない映画である。 画面を目一杯使った圧倒的大自然、その中に置かれた小さな人間、何とちっぽけで気高いのか。 ノマドとは遊牧民を指す。家を持たずキャンピングカーで流浪…

2021.03.02「すばらしき世界」新宿ピカデリー

2021.03.02「すばらしき世界」新宿ピカデリー ワーナーマークからオフでリバーブの効いた足音の様な音が薄く入る。刑務所の中を魂が彷徨っているようだ。もちろん後付けの理屈。見ている時はノッケから何だろう? だった。ただ孤独感はひしひしと伝わ…

2021.03.04「天国にちがいない」新宿武蔵野館

2021.03.04「天国にちがいない」新宿武蔵野館 映画は映像と音で物語を語って来た。少し物語に頼り過ぎてやしないか。物語に依存しない映画独自の表現、そんなものはあるのか、可能か。 この映画に特段の物語はない。主人公が発する台詞は“ナザレ”“パレスチナ…

2021. 1. 26「21世紀の映画アンケート」

2021. 1. 26 「21世紀の映画アンケート」 年々文章を書くのが億劫になっている。このブログも最初の頃の勢いはない。映画は見たがブログ化していないものもたくさんある。今回は、「21世紀の映画アンケート」で邦洋問わず5~10本を選び簡単なコメント…

2020.12.18 「燃ゆる女の肖像」 日比谷シャンテ

2020.12.18 「燃ゆる女の肖像」 日比谷シャンテ 18世紀、女が自由に生きられなかった頃の、その運命を受け入れつつも、一瞬の自由の輝きを生きた二人の女の物語。 仏、ブルターニュ地方の孤島、貴族の娘の結婚は政略であり、それを推し進める手立て…

2020.08.07「はちどり」TOHOシネマズシャンテ

2020.08.07「はちどり」TOHOシネマズシャンテ 少女ウニ (パク・ジフ) が必死にアパートの鉄の扉を叩く。母を呼ぶ。しかし中からは何の反応もなく扉は開かない。少しして少女は踵を返して下の階へ降りて行く。カメラはそれを手持ちで背後から追う。…

2020.7.03「花のあとさき ムツばあさんの歩いた道」シネスイッチ銀座

2020.07.03 「花のあとさき ムツばあさんの歩いた道」シネスイッチ銀座 秩父市吉田太田部楢尾、群馬との県境、山の急斜面にへばりつく様に立つ今は住む者もいない10件たらずの民家、炭焼きと養蚕を生業とし、かつては100人からの人が住んでいた。それらが衰…

2020.7.02「コリーニ事件」新宿武蔵野館

2020. 7.02 「コリーニ事件」新宿武蔵野館 未読だが多分膨大な原作(フェルディナント・フォン・シーラッハ)なのだろう。それをよく纏めた脚本である。要点を残し、削りに削り、テンポ良い編集で、重いテーマを踏まえた良質なエンタメ映画に仕上げ…

2020.06.05 「アマルコルド」配信 (1973年)

2020.6.05 「アマルコルド」配信 (1973年) 綿毛が飛んで来ると春だ。北イタリアの小さな港町、15歳の思春期の少年、その名はフェリー二君ならぬチッタ(ブルーノ・ザニン)、頭の中はオッパイとお尻で一杯である。 春は、冬の女神の人形を火あぶりにする祭りか…

2020.03.03「1917 命をかけた伝令」新宿ピカデリー

2020.03.03 「1917 命をかけた伝令」新宿ピカデリー 第一次世界大戦は、未だ航空機が主力とはならない、地上戦が中心の最後の戦争だったといわれている。ドイツとフランスの間に作られた延々と続く両軍の塹壕、それを挟んでの戦い。空からの破壊兵…

2020.01.16「パラサイト」TOHOシネマズ日比谷

2020.01.16 「パラサイト」TOHOシネマズ日比谷 <ネタバレだらけ> 韓国映画喰わず嫌い、ポン・ジュノ全くの初心者。観て驚いた。圧倒的に面白い。口開いて観て面白く、後で考えさせる。エンタメにする力技、邦画は歯が立たず。 半地下に暮らすとい…

2020.02.03 「ジョジョ・ラビット」 日比谷シャンテ

2020.02.03 「ジョジョ・ラビット」日比谷シャンテ ビートルズの「抱きしめたい」ドイツ語バージョンがC.Iした時には度肝を抜かれた。 その歌を背景にはしゃぎまわるナチ少年ジョジョ(ローマン・グリフィン・デイヴィス)、記録映像でヒットラーに…

2020.02.06 「アイリッシュマン」シネリーブル池袋

2020.02.06 「アイリッシュマン」シネリーブル池袋 アイリッシュマンというタイトルからゴッドファーザーのアイリッシュ版かと思った。前に見たジョニー・デップの映画「ブラック・スキャンダル」(拙ブログ2016.2.9) がボストンを舞台にアイリッシ…

2020.01.26 M・I グランプリ2019

2020.01.26 M・Iグランプリ2019 2019年度は邦画28本、洋画15本、昨年同様これでグランプリを選ぶのは気が引けるのだが「2019私が見たもの」というカッコ付で強行することにいたします。 〇音楽賞 「蜜蜂と遠雷」音楽スタッフ 挿入曲「春と修羅…

2019.11.28 「蜜蜂と遠雷」日比谷TOHOシネマズ

2019.11.28 「蜜蜂と遠雷」日比谷TOHOシネマズ 母と幼い娘が連弾をしている。クラシックの良く聴くピアノ曲 (曲名が出てこない) 、母が主旋律を弾き、娘が高音域で自由に戯れる。リバーブを一杯に効かせた高音が雨音に重なる。雨の雫のスローモー…

2019.11.11「真実  特別編集版」日比谷シャンテ

2019.11.11「真実 特別編集版」日比谷シャンテ 大女優ファビエンヌ (カトリーヌ・ドヌーブ) が自伝を出版するという。娘リュミール (ジュリエット・ビノシュ) はゲラの段階で見せるようにと母に頼み、わざわざアメリカから夫(イーサン・ホーク) と…

2019.11.12 「イエスタディ」日比谷TOHOシネマズ

2019.11.12 「イエスタディ」日比谷TOHOシネマズ ビートルズ世代としては見ない訳にはいかない。 ギター一本で唄うシンガーソングライター・ジャック(ヒメーシュ・パテル)、夢を諦めようとした矢先、12秒間の世界停電が起き、それが原因の交通事…

2019.11.08 「ジョーカー」日比谷TOHOシネマズ

2019.11.08 「ジョーカー」日比谷TOHOシネマズ 自分の存在理由を全て否定されたらどうなるのだろう。アーサー(ホアキン・フェニックス)はこの世のものとは思えない異様さで笑い出す。そして自分から意図せぬも、周りから与えられて、負の存在理…

2019.10.09「宮本から君へ」新宿バルト9

2019.10.09「宮本から君へ」新宿バルト9 原作漫画、TVとも未見、どんな話かも知らず。ただこの監督の前作「ディストラクション・ベイビーズ」(拙ブログ2016.6.08) のバイオレンスがとっても印象に残っているので、そっち系かなとは思った。案の定…