映画と映画の音楽  by  M・I

音楽を気にしながら映画を観る、そんな雑感

洋画

2021.04.28「ブータン 山の教室」岩波ホール

2021.04.28「ブータン 山の教室」岩波ホール 国旗を崇め国歌を斉唱し王様を尊敬する、自然と生活と政治体制がひとつになって調和する理想の姿。本当か? かつては世界中みんなそうだったのか。人が集まれば争いが起こる。けれど人間同士争っては生きていけな…

2021. 04. 23「ミナリ」TOHOシネマズシャンテ

2021.04.23「ミナリ」TOHOシネマズシャンテ 1980年代、農業でアメリカンドリームを果たすべく、中西部アーカンソー州へ移住した韓国人一家の物語。夫婦(ジェイコブとモニカ)、まだ幼い姉弟(アンとデビッド)の四人家族。夫婦はまずロスに住み、ひよこの雌雄の…

2021.04.06「ノマドランド」TOHOシネマズ日比谷

2021.04.06「ノマドランド」TOHOシネマズ日比谷 劇場の大スクリーンで観なければいけない映画である。 画面を目一杯使った圧倒的大自然、その中に置かれた小さな人間、何とちっぽけで気高いのか。 ノマドとは遊牧民を指す。家を持たずキャンピングカーで流浪…

2021.03.04「天国にちがいない」新宿武蔵野館

2021.03.04「天国にちがいない」新宿武蔵野館 映画は映像と音で物語を語って来た。少し物語に頼り過ぎてやしないか。物語に依存しない映画独自の表現、そんなものはあるのか、可能か。 この映画に特段の物語はない。主人公が発する台詞は“ナザレ”“パレスチナ…

2020.12.18 「燃ゆる女の肖像」 日比谷シャンテ

2020.12.18 「燃ゆる女の肖像」 日比谷シャンテ 18世紀、女が自由に生きられなかった頃の、その運命を受け入れつつも、一瞬の自由の輝きを生きた二人の女の物語。 仏、ブルターニュ地方の孤島、貴族の娘の結婚は政略であり、それを推し進める手立て…

2020.08.07「はちどり」TOHOシネマズシャンテ

2020.08.07「はちどり」TOHOシネマズシャンテ 少女ウニ (パク・ジフ) が必死にアパートの鉄の扉を叩く。母を呼ぶ。しかし中からは何の反応もなく扉は開かない。少しして少女は踵を返して下の階へ降りて行く。カメラはそれを手持ちで背後から追う。…

2020.7.02「コリーニ事件」新宿武蔵野館

2020. 7.02 「コリーニ事件」新宿武蔵野館 未読だが多分膨大な原作(フェルディナント・フォン・シーラッハ)なのだろう。それをよく纏めた脚本である。要点を残し、削りに削り、テンポ良い編集で、重いテーマを踏まえた良質なエンタメ映画に仕上げ…

2020.06.05 「アマルコルド」配信 (1973年)

2020.6.05 「アマルコルド」配信 (1973年) 綿毛が飛んで来ると春だ。北イタリアの小さな港町、15歳の思春期の少年、その名はフェリー二君ならぬチッタ(ブルーノ・ザニン)、頭の中はオッパイとお尻で一杯である。 春は、冬の女神の人形を火あぶりにする祭りか…

2020.03.03「1917 命をかけた伝令」新宿ピカデリー

2020.03.03 「1917 命をかけた伝令」新宿ピカデリー 第一次世界大戦は、未だ航空機が主力とはならない、地上戦が中心の最後の戦争だったといわれている。ドイツとフランスの間に作られた延々と続く両軍の塹壕、それを挟んでの戦い。空からの破壊兵…

2020.01.16「パラサイト」TOHOシネマズ日比谷

2020.01.16 「パラサイト」TOHOシネマズ日比谷 <ネタバレだらけ> 韓国映画喰わず嫌い、ポン・ジュノ全くの初心者。観て驚いた。圧倒的に面白い。口開いて観て面白く、後で考えさせる。エンタメにする力技、邦画は歯が立たず。 半地下に暮らすとい…

2020.02.03 「ジョジョ・ラビット」 日比谷シャンテ

2020.02.03 「ジョジョ・ラビット」日比谷シャンテ ビートルズの「抱きしめたい」ドイツ語バージョンがC.Iした時には度肝を抜かれた。 その歌を背景にはしゃぎまわるナチ少年ジョジョ(ローマン・グリフィン・デイヴィス)、記録映像でヒットラーに…

2020.02.06 「アイリッシュマン」シネリーブル池袋

2020.02.06 「アイリッシュマン」シネリーブル池袋 アイリッシュマンというタイトルからゴッドファーザーのアイリッシュ版かと思った。前に見たジョニー・デップの映画「ブラック・スキャンダル」(拙ブログ2016.2.9) がボストンを舞台にアイリッシ…

2019.11.11「真実  特別編集版」日比谷シャンテ

2019.11.11「真実 特別編集版」日比谷シャンテ 大女優ファビエンヌ (カトリーヌ・ドヌーブ) が自伝を出版するという。娘リュミール (ジュリエット・ビノシュ) はゲラの段階で見せるようにと母に頼み、わざわざアメリカから夫(イーサン・ホーク) と…

2019.11.12 「イエスタディ」日比谷TOHOシネマズ

2019.11.12 「イエスタディ」日比谷TOHOシネマズ ビートルズ世代としては見ない訳にはいかない。 ギター一本で唄うシンガーソングライター・ジャック(ヒメーシュ・パテル)、夢を諦めようとした矢先、12秒間の世界停電が起き、それが原因の交通事…

2019.11.08 「ジョーカー」日比谷TOHOシネマズ

2019.11.08 「ジョーカー」日比谷TOHOシネマズ 自分の存在理由を全て否定されたらどうなるのだろう。アーサー(ホアキン・フェニックス)はこの世のものとは思えない異様さで笑い出す。そして自分から意図せぬも、周りから与えられて、負の存在理…

2019.9.18「サタンタンゴ」ヒューマントラスト有楽町

2019.9.18「サタンタンゴ」ヒューマントラスト有楽町 第1章 ファーストカットで眠りに落ちる? マラソンに臨むような気持で見た。 ファーストカットはひと気の無い寒村、そこのぬかるみの広場に放たれた牛の群れ。一頭がカメラに近づいて来たのでそ…

2019.9.20「ワンス アポン ア タイム イン ハリウッド」新宿ピカデリー

2019.9.20「ワンス アポン ア タイム イン ハリウッド」新宿ピカデリー 映画オタク・タランティーノの蘊蓄満開の映画である。というよりも幼き頃の彼の脳裏に染みついた光景や音楽を見事に再現した幼児体験再現の映画。1969年のハリウッド、タラン…

2019. 9. 19「ラスト・ムービースター」シネマカリテ

2019.9.19「ラスト・ムービースター」シネマカリテ 前日「サタンタンゴ」(7時間18分150カット、拙ブログ2019.9.18) を見てのこの映画、一瞬目眩がした。「サタン~」を見た時の目眩とは真逆。僕は「サタン~」対応の鑑賞眼のままになっていたらしい。…

2019.8.29 「世界の涯ての鼓動」日比谷シャンテ

2019.8.29 「世界の涯ての鼓動」日比谷シャンテ 今時こんな一直線一途な恋愛映画も珍しいのでは… 果たしてこんな恋愛映画は成立するのか。その為に男女の設定を考えうる限り離れたものにする。 女 (アリシア・ビカンダー) は海洋生物学者、地球の中…

2019.6.24「ゴジラ  キング・オブ・ザ・モンスターズ」新宿ピカデリー

2019.6.24 「ゴジラ キング・オブ・ザ・モンスターズ」新宿ピカデリー 日本の特撮映画だったらまず冒頭は主人公の紹介と日常描写だ。あるいは突然、ゴジラがどこどこに現れましたと特撮が短く入るも日常に戻る。本格的に特撮が始まるのは中盤以降。…

2019.5.08「記者たち 衝撃と畏怖の真実」TOHOシネマズ・シャンテ

2019.5.08「記者たち 衝撃と畏怖の真実」TOHOシネマズ・シャンテ アメリカがイラクを攻撃した理由として大量破壊兵器保有があった。後で解ったが、実はデッチ上げだった。初めにイラクとの戦争有りき。ラムズフェルトを中心にそのシナリオに則して…

2019.3.02「THE GUILTY ギルティ」ヒューマントラスト渋谷

2019.3.02「THE GUILTY ギルティ」ヒューマントラスト渋谷 耳にインカムを付けた緊急通報室オペレーター・アスガー (ヤコブ・セ―ダ―グレン) のみを映し続けるカメラ。舞台も緊急通報室のみ。しかも焦点はアスガーだけに絞られている。 一本の通報が…

2019.1.09「家へ帰ろう」シネスイッチ銀座

2019.1.09「家へ帰ろう」シネスイッチ銀座 本年最初の映画。冒頭はダルシマーのUPから。ヴァイオリン、アコーディオン、クラリネット、コントラバス、ギター(あったか?) の賑やかな演奏。ユダヤ人の一族が集まっての大宴会。曲に合わせてみんな踊り…

2019.1.25「バハールの涙」新宿ピカデリー

2019.1.25「バハールの涙」新宿ピカデリー 暫く更新を怠っていた。今年最初のUPである。今年に入ってまだ映画を二本しか見ていない。一本目は「家に帰ろう」、とっても良い。これについては近々UPの予定。二本目がこれ、重いだろうことは想像がつい…

2018.08.24「Wind River」角川シネマ有楽町

2018.08.24「Wind River」角川シネマ有楽町 大分時間が経ってしまったが、良い映画だったのでメモと記憶を絞り出して記す。記憶違いあるやも。 アメリカは広い。舞台はワイオミング州だという。ワイオミングと言えば「ララミー牧場」だ。緑豊かな…

2018.08.20 「オーシャンズ8」丸の内ピカデリー

2018.08.20「オーシャンズ8」丸の内ピカデリー 暫く映画から遠ざかっていた。久々の復帰。まずは軽めの作品で。 これ予告編を観て、絶対観ようと思っていた。予告編の音楽が「旅立てジャック」だったから。’60のオリジナルではなく今風カバーだっ…

2018.07.26 「女と男の観覧車」 丸の内ピカデリー

2018.07.26「女と男の観覧車」丸の内ピカデリー ウッディ・アレン師匠のNYマンハッタン亭、今宵のお噺はケイト・ウィンスレットを主演に迎えてのロングアイランド物語、相変わらずの軽妙洒脱な語り口、これ既に名人の域、まずはその芸をご堪能あ…

2017.10.10 「ダンケルク」 新宿ピカデリー

2017.10.10 「ダンケルク」新宿ピカデリー 今頃「ダンケルク」、昨年秋の映画。二度見したかったのだが、その機会を逸した。直後のメモを頼りに記す。細部の記憶は曖昧。 映画は文学と美術と音楽と科学技術を総動員して作り出す表現である。そこか…

2017.11.10「ブレードランナー 2049」丸の内ピカデリー

2017.11.10「ブレードランナー 2049」丸の内ピカデリー 二度見した。一度目は ”タイレル社” や ”レイチェル” と言う言葉を聞いて一気に30年前に戻り、前作を観た時の衝撃を思い出した。灰色に煙るLAの高層ビル群をぬって飛行するブレードランナー…

2017.09.01 「エル  ELLE」 日比谷シャンテ

2017.09.01「エル ELLE」日比谷シャンテ よくぞまあここまで今の様々な問題をぶち込んだものである。情報量は大変なもの。それを単なる羅列に終わらせず、有機的に物語として、しかも一級のエンタテイメントとして纏め上げた脚本と演出は大変なも…