2011.5.9「キッズ・オールライト」シャンテ
2011.5.9「キッズ・オールライト」シャンテ
レズビアン夫婦の物語。
人口受精で二人は一人ずつ子供を生む。姉弟はレズビアンの模範的家庭環境で順調に育ち思春期を迎える。二人は父、つまり精子提供者を知りたくなり、突き止め、会う。男は、家庭を持ったことのない、普通に良い人だった。男は家庭に出入りするようになる。父親役の女は医師、経済面を支え、母親役の女は専業主婦で社会的に自立をしていないことへのコンプレックスがある。ちょうど子育ても終りに差し掛かる頃…
主婦役女の心の空洞に男が入り込む。レズだったはずの女が男に狂う。ジュリアン・ムーア、「ショートカット」(ロバート・アルトマン)で確かヘヤーを剥き出しにした綺麗な女優。今でも綺麗だが裸になった時の腕から背中にかけては一面のソバカスだらけ。その体が男を貪りのたうつ。凄い。
父親役女 (アネット・ベニング) は気がつく。じっと耐える。家庭崩壊の危機。男は二人の子供を引き取って家庭を作る決意をするが、若くない女はそれが現実的でないことをしっかり見つめる。恋愛(セックス)は一時のもの。彼女等には家庭を築き上げて来た時間がある。
姉の大学生としての自立を機に元の鞘に納まる。むしろ子供たちは冷静だ。姉は弟に“二人を頼む”と言い、弟は二人に言う。“もう二人とも若くないんだから”
じっと耐えるも一度だけ“生活を支えているのは私!“と言ってしまうアネット・ベニングが良い。納まり方は古典的であり、ホッとする。これストレートの夫婦に簡単に置き換えられる話である。だがストレートだった時に、男は別の女に走るという話になりがち。そこはレズゆえ、より絆が強いのだろう。
いかにもアメリカらしい、形を変えたホームドラマ。今やここまで捻らないとホームドラマは成立しないのかも知れない。
音楽は既成曲が散りばめられていて、でもほとんど印象に残らず。劇伴は運び役として少しはあるが、それ以上のものではない。運び役を無難にこなし、印象に残らないということは良い劇伴か。この手の映画で音楽が果たせる役割とはどんなものなのか。作曲家はそれなりに大作もこなしている人のよう。
音楽が付くことによって、背後に宇宙が広がるとか、闇を暗示するとか、そんな余地の全くない、現実がギュウギュウづめの、おもしろくて考えさせられる映画である。
脚本が良い。
監督 リサ・チョロデンコ 音楽 カーター・バーウェル、ネイサン・ラーソン、クレイグ・ウェドレン