映画と映画の音楽  by  M・I

音楽を気にしながら映画を観る、そんな雑感

 2011.5.19「これでいいのだ」丸の内TOEI  

 2011.5.19「これでいいのだ」丸の内TOEI  

 

赤塚不二夫の、絶頂から凋落 (収まり) に至る話を新人編集者 (堀北真希) を通して描く。浅野忠信が赤塚役。カッコ良過ぎると思ったが、頑張っている。ほとんど私と同時代、同感性。この映画、一般性はあるかといえば無い。商売としては難しいだろう。今や赤塚自体を知らない人が一杯の時代である。かと言って、知っている人が懐かしがって見に来るかといえばマニアック過ぎる。私あたりが見る以外にターゲットはない。懐かしくって嬉しかった、私は。

テーマは「バカになれ!」である。バカはきちんとやるとシュールになる。

漫画の常識を次々に壊して、学生運動をチャかし、酒びたり、超マザコン。母役の久々いしだあゆみのミイラの様な顔にビックリ。本物の病人としか思えない。

バカ田大学校歌」が出てきて「ダイナマイトが150トン」に至っては泣けてきた。内藤陳の「ハードボイルドだど!」もあった。でもこれに泣ける者は今の日本には数少ないだろうなあ。

音楽は”めいなCo” クレージーなどのコミック映画に御決まりの効果音的音楽と、感情移入のシンセ白玉物。特に印象に残らず。でも映画がそれ以上の音楽を求めていない。他にやりかたはなかったか、見ながらずっと考えた。大仰なオケのテーマで赤塚の孤独を強調する方法もあるかもしれないが、そうすると暑苦しくて、シュールでなくなる。キッチュでなくなる。きっと、あれでよいのだ!

バカ田大学校歌」「ダイナマイト」「高校三年生」等、劇中の歌として流れる音楽で充分なのだ。

ローリングにユニコーンの主題歌。でも「バカ田」か「ダイナマイト」の合唱で締めてほしかった。

昔、TVで赤塚が「僕はもうやることがなくなったんだよ、全部やっちゃったから」と言っていたのを思い出す。ヘンに別ジャンルへ行くこともなく、アニメや映画に進出することもなく、文化人にもならず、バカで一貫した、小気味良い、マザコン男だったのだ。

確か、佐藤勝のファンだったとか。

堀北真希が可愛かった。

監督.佐藤英明  音楽.めいなCO.