2011.6.2 「ブラックスワン」日劇マリオン
この手、あまり得意ではありません。
サイコホラー音楽映画。ナタリー・ポートマンは見事なバレーダンサーを演じて驚嘆。役柄に肉体を合わせて完璧。カメラも長回しでダンスシーンを捉えて文句の付けようなし。
「白鳥の湖」は白鳥と黒鳥の二役を演じなければならない。白鳥は完璧だが王子を誘惑する黒鳥を踊れない真面目なN・ポートマン、未だ官能を知らず。演出家が露骨な言葉で挑発する。背後に厳しい母親がいる。その抑圧から自立出来ない。自分の中の官能を解き放つまでの物語。母親から自立するまでの物語。そう言ってしまえば身も蓋もないか。
音楽は当然ながらチャイコフスキーが全編に。サスペンスには所々に今風シンセのサウンドも。オリジナル音楽のクレジット、既成曲のクレジットが、ローリングで並んでいるが、「白鳥湖」しき印象にない。
官能の化身の様なライバルダンサーを刺すも、それはもう一人の自分だったというのも、ちょっと陳腐かなぁ。
ラスト、奈落に横たわるN・ポートマンの腹に大きな刺し傷。そこから溢れる血。そして上を見上げて「完璧」と言う。象徴なら、腹の傷は無くて良い。それとも本当に自分を刺して、息絶えるということ? 深い例えとは言えないので、どちらでも良いが、傷はない方がハッピーエンド感はある。
ローリングにウィノナ・ライダーのクレジット。どこに出てたのかと思ったら、年老いて主役の座を明け渡す、かってのプリマ・ベスという役。そういえばそんな顔していた。
隔世の感あり。
監督 ダーレン・アロノフスキー 音楽 クリント・マンセル