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映画と映画の音楽  by  M・I

音楽を気にしながら映画を観る、そんな雑感

2011.7.25「小川の辺」 丸の内東映 

2011.7.25「小川の辺」 丸の内東映   

 

ド頭、家老の部屋に入ろうと襖を開ける主人公の腰から下のアップ、それに被って“戌井∖朔之助でございます”この東山紀之の台詞の軽さ、ノッケからダメ!だった。台詞の、輪郭がダメ、音圧がダメ、声量がダメ。ここで躓くと、以後この映画、見ているのがつらくなる。

藤沢周平の原作を紙芝居にしたような映画である。映画的深みは皆無。

まずメインの役者3人がダメである。東山、勝地涼菊地凛子。菊地は全くのミスキャスト。全くこの役に顔立ちが向いていない。何でこんなキャスティングするのか。時々出る父親役の藤竜也と頭でちょっとだけ出る笹野高志だけがさすがと感心させられる。

正論を言った剣友の藩士 (片岡愛之助) がお上の逆鱗に触れることとなり、それを討てと命じられた東山、その友の妻は実妹、という毎度お馴染み、武士社会の不条理を描いた藤沢の話。しかし、不条理を解りながらそれに従う哀しさ、さらには武家社会そのものへの疑問、それに翻弄される家族や女、というところに話が深まらない。兄妹と、弟の様だった徒弟 (加瀬亮) と、3人で川遊びをした記憶、あだ討ちの後、徒弟に妹を頼むと言い残して国へ一人戻る東山、その感慨は浅い。

脚本が長谷川康夫と飯田健三郎。毎度お馴染み小滝プロデューサーとのコンビである。

音楽、武部聡志。シンセのパッドに太鼓の曲。Pfでコードを小節頭に叩く効果音っぽい曲(でもコード進行はお決まり)。新日本紀行のような弦の入った曲。音楽はほぼこの3つ。

時に画に合わせて録ったものあり。編集で付けたものあり。心理描写には前の2曲、旅するシーンには新日本紀行風。新日本紀行風の曲の筏下りシーンではSyn・TPのような音色がメロを取るがその頭がヨレて聴こえた。人物の心情に付けるというやり方でないのは解るが…。ただのBGM、映画音楽にはなってない。

唯一良かったのは殺陣。これはさすがスポーツ万能の東山、見事である。途中に出てくる彼の腕や足首なども鍛えられていて体の切れは素晴らしかった。菊地凛子の殺陣も良かった。

クライマックスの戦いの殺陣は見ごたえ十分、そのシーンの音楽は太鼓だけ。これは多分画に合わせてやったのだろう。これはこれで良かったのだが、ここを音楽無しにするという手もあったのでは。それをするには音楽の設計を根本から変えなければならないが。

武部聡志、名編曲家。歌物の編曲では右にでるもの無し。しかし映画音楽の作曲家ではない。

監督 篠原哲雄  音楽 武部聡志