2012.5.28「わが母の記」 丸の内ピカデリー
2012.5.28「わが母の記」 丸の内ピカデリー
井上靖と母の関係を長きに渡って描いた、井上家の物語。
冒頭、湯ヶ島のわさび田が出てきて、それだけで引き込まれた。カメラがとっても良い。この映画の格調は撮影に負うところ大である。
話は1950年代から70年代あたりまで。戦争中の回想も入れるともっと長きに渡る。井上靖と母、妻と三人の娘、そして靖の姉妹、の話。何よりも「家」というものがしっかりあって、「父」に威厳があった。「父」を中心にすべてが展開するこんな家族の映画、久々である。展開も早く、飽きさせずに上手く作っている。
音楽は初めにバロック調の室内楽、次にギター(リュート?)曲、そしてバロックではない普通のオケ曲と3つ。これを本当に必要な所にだけつけている。この付け方は良い。しかし絵合わせで録ったものではないようで、音楽尻の不自然なFOが気になった。
異質な3曲だが全体としての違和感は無かった。けれどテーマメロを一つにして、編成で変化を付けた音楽構成にすればもっと良かったのでは。
どれも絵面とその時の心情には合っている。しかしもう一歩踏み込んで、井上家の血、とも言うべきテーマが通っていれば。
樹木希林、相変わらずの怪演、役所広司確実、宮崎あおいもしっかりで可愛い。
もっともっと母と息子に深いわだかまりがあって、死を前にした最後に一気にそれが解けて号泣するというものを期待していた向きにはあっさりしていると感じたか。私もだが。
監督 原田眞人 音楽 富貴晴美