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映画と映画の音楽  by  M・I

音楽を気にしながら映画を観る、そんな雑感

2012.7.18「苦役列車」 丸の内TOEI 

2012.7.18「苦役列車」 丸の内TOEI 

 

久々の青春一途映画。村上春樹だけが青春ではない!真っ直ぐだ。

金無い、友無い、女無い。青春なんて程度の差こそあれ、みんなそうだ。そんな日本の端っこの青春。原作は西村賢太。主人公の名前は寛多。こいつに初めて友達のようなものが出来た。女の友達も出来た。男二人と女一人は青春映画の王道である。三人で冬の海に飛び込んでキャッキャッと騒ぎ、まさに青春の輝く一瞬を持つ。やがてその関係は壊れる。そして寛多は小説を書き出す。この典型的な青春を、中卒、日雇い、風俗好き、と、今の日本の若者像とは最も遠い意匠で描く。コンプレックスの塊であると同時に「俺はオレだ!」のプライドをしっかり持って、楽しみは小説を読むこと、が、小説を書くことへと進化していく。

寛多から見たら、多分私の環境は敵側だ。でも気持ちは寛多側である。田舎物が世田谷とか杉並に住みたがる、意義無し! 共感するところ大。絶対に寛多側に付く。この映画で励まされる奴は一杯いるはずだ。

まず、この小説に芥川賞を与えた人々は偉い。そしてそれを映画化した連中は良くやった。山下の代表作。森山未来は見事。高良健吾が始めて自分の風貌に合った役をやった。君はどう見たってヤクザのチンピラなんかじゃない。山の手の、あるいは地方から出てきた、生活には困らないボンボンだ。だから凄く自然だ。前田敦子もなんと普通で可愛いことか。

音楽、スチャダラパーSHINCOがほとんどパーカッションとギター系の小編成でやっている。変に綺麗な楽音ではこの映画のリアリティを壊す。でもひとつメロがあれば。シンプルで短く“俺はオレだ”のテーマ。ピュアのテーマ。メロが乗るとウェットになると考えたのだろう。当たり前になってしまうと考えたのだろう。それも解るが。

さてキネ旬読んだ。前田敦子は原作にはなく脚本家?による新たなキャラだとのこと。これ見事。それで青春映画になった。砂の穴に落ちて小説を書き出すという終り方は、役者の都合などで現場で思いついた苦肉の策だったそうな。勢いのある奴は災いをプラスに変える。終り方喝采。

監督.山下敦弘 脚本.いまおかしんじ 音楽.SHINCO

原作は西村賢太。映画を気に入ってないらしい。