映画と映画の音楽  by  M・I

音楽を気にしながら映画を観る、そんな雑感

2012.12.11「その夜の侍」スバル座

2012.12.11「その夜の侍」スバル座 

 

お芝居の映画化。監督が見つからず、舞台の脚本演出家が監督をしてしまったそうな。

それにしては演出は上手い。滞るところなく、自然に話しは流れる。山田孝之が見事な悪役。これ以上無いくらい憎たらしくてワイルド。その真逆が堺雅人の内に籠る主人公。しかしこの男が見事に武士である。あれほどまでに酷い目に合わされながら、殺すと予告し追い回しながら、最後は殺さない。あんたとは関係ない!と言い放つ。ひとえに自分を取り戻す為の行為だったのだ。これ、確かに立派。報復してしまえば当たり前の普通。それをせずに最後は妻の言葉を守って、プリンを食べずに頭から垂らす。顔中プリンだらけになる。

お芝居は面白いかもしれない。言葉のやり取りに観念的な意味が込められて深いのだろう。しかし映像はどうしようもなく即物的である。リアルである。そこで発せられる言葉には、舞台の様なデフォルメされた空間での日常とは違った深みはない。芝居を映像に置き換えるときの違い、難しさである。

映画的な流れで見ていると、どうしても山田孝之を殺した方がスッとする。当たり前だけどスッとする。そうしなかったことを分からせてそれによる感動をひき起すように持っていくにはどうしたら良かったのか。

音楽は窪田ミナとクレジット。ほとんど聴こえるか聴こえないか位の低いレベル。でも良く聞くと悪くはなかった。Pfとシンセ、弦もあった。ちゃんと書かれている。

主題歌はUAで名曲「星影の小径」

監督 赤堀雅秋  音楽 窪田ミナ  主題歌 UA「星影の小径」