映画と映画の音楽  by  M・I

音楽を気にしながら映画を観る、そんな雑感

2012.9.26「天地明察」丸の内ピカデリー  

2012.9.26「天地明察」丸の内ピカデリー  

 

滝田さん、満を持しての登場。役者もズラリと揃えての娯楽大作。どんなネタでも面白いエンタメに仕上げるというのが滝田。これもちゃんと娯楽大作として及第点ではある。しかし滝田の良さは出ているか。このネタは滝田向きだったか。アカデミー監督として次なる作品は立派なものでなければいけないと、あまり意識し過ぎたのではないか。

天体好きな碁打ちが暦の間違いを正す話。その事実は実に面白い。関孝和などが絡み、暦がいかに大切でまた政治的なものかを教えてくれる。机上の論理とその観測による実証、それは今日の科学も同じ。その実証を映画として面白く見せる工夫は本当に大したもの。脚本と美術とキャスティングは大変な工夫である。美術・部谷京子さん良い仕事。

だけどこれ、事実が面白く、それはNHK「歴史発見」とかで、ただ事実を並べるだけで事足りたのでは? ドラマ化して、それ以上に果たして面白くなったか。

恐らく原作本は事実の文字による解説と物語が絶妙だったのだろう。活字向きである。果たして劇映画という表現に適したものであったか。

売れてる原作本、内容も圧倒的に事実が面白い、それをずらり豪華キャストでドラマ化、日本各地をロケしてのスケール、時代劇であると同時に観測の為の大仕掛けの作り物、これは映画として充分面白くなる…。そう考えてしまうのはよく解る。滝田、それに引っ張られた。

岡田準一も頑張っている、台詞がイマイチだが。宮崎あおいは相変わらず良い。脇は笹野、一徳、中井、幸四郎染五郎等、申し分ない。しかしこのネタ、滝田向きではない。さらに言えば映画向きではない。滝田らしい、小粒でも味のあるもの、なぜ作らないのか。アカデミーが重いか。

音楽・久石さん、王道。サントリーのお茶CMに似たメロをメインテーマに随分と映画を助けている。もっと刈り込まなければいけない編集の冗長を音楽がフォローする。映画音楽としては立派である。でも映画がそうなのでシャレてない。

滝田、次、何撮る?

監督 滝田洋二郎  音楽 久石譲