映画と映画の音楽  by  M・I

音楽を気にしながら映画を観る、そんな雑感

2013.2.26「世界にひとつのプレイブック」シャンテ  

2013.2.26「世界にひとつのプレイブック」シャンテ  

 

久々にハートウォーミングな恋愛映画である。

原作の直訳なのか、邦題の意味が良く解らない。

夫を事故で亡くした女と、妻の浮気相手をボコボコにして躁鬱病になって病院に入った男のハッピーエンドの物語。恋の障害にメンタルを持ってきた所が今風。骨格は大オーソドックスなのだが、ちょっとした設定で今の映画となる。

ちょっとしたことでキレてしまう。何でもストレートに言ってしまうので周囲と上手くいかない。悪意も犯意もないのに成り行きで警察沙汰になってしまう。考えれば回りにいくらでもいる。でも周りは迷惑する。段々と周りが引いて行き、孤立し、本物の犯罪者や異常者になってしまう。しかしこの二人はお互いが出会えたことで、社会復帰出来た。そんな話。

機関銃のようなストレートな言い合いは今日的。本心を上手く伝えられないもどかしさは古典的。でもこれがいい具合にブレンドされている。カメラは手持ちを多用、言い合いのスピード感を良く出していて適したテクニック。アングルも工夫していて、映像的見せ場を作りにくい素材に変化を与えている。カメラは日本人名のクレジット(マサノブ タカヤナギ)。こういう人が出てきた。

背景には、二人を見つめる家族がいる。失業して年金も止められた両親。父親はロバート・デ・ニーロ、何と普通の父親をしっかりやっていることか。母はオーストラリアのビック・バッド・ママ「アニマル・キングダム」のあの怖いお母さん。一見はジュリエッタ・マシーナ。これが古いアメリカの、耐えるしかしいざとなったらしっかりする母を、寡黙に、でも存在感たっぷりに演じる。ここには下町的家族が残っている。隣近所もそう。地元のアメフットに入れ込む人々。かかりつけの、やたらと薬を飲むように進める心療医。この医者がフットボールの試合会場で会うと顔にペンキを塗って暴れまわる。このエピソードは秀逸。

ジェニファー・ローレンス、可愛くてセクシー。オスカーの主演女優賞である。男も良かったが、この娘の魅力で引っ張られた。美人度がじつに程好い。スタイル良くセクシー。ちょっとひねた物言い、そして結局純情。こんな子居るか!

聞いたら、「ウインターズボーン」のあの笑わない女の子。いい女に成った。

音楽、ダニー・エルフマン。ほとんど既成曲で構成して上手い。ティム・バートンの「ドラキュラ」でも、既成曲を上手く使っていた。彼の力か監督か。

前半、躁鬱や神経症の二人の薬の話やセックスの話で、アメリカは病んでるなぁと思ったが、いえいえちゃんとまだセイフティネットとしての家族や下町人情は残っていたのです。映画の中だけかもしれないが。

監督 デヴィッド・O・ラッセル  音楽 ダニー・エルフマン