映画と映画の音楽  by  M・I

音楽を気にしながら映画を観る、そんな雑感

2014.7.17 「私の男」 スバル座

2014.7.17「私の男」スバル座 

 

期待し過ぎたか。

奥尻津波で天涯孤独になった少女と、それを引き取って育てる遠縁の男(浅野忠信)との話。禁断の近親相姦もの。導入のひとり取り残された少女が良い。瞬きせず、遠くを見つめ続ける、この世にひとりだけ取り残された少女の絶対孤独感が良く出ている。この導入がこの映画で一番良い。成長して二階堂ふみ、やがて男と深い関係になる。もしかしたらこれは実の父親かもと匂わせつつ。二階堂が、タブーなんて何にも無いみたいなことを叫ぶ。確かに実の親子だろうと兄弟だろうと、近親相姦だろうと何だろうと、大自然宇宙と時間の流れの中では何の問題もない、出会ったという奇跡に感謝して受け入れれば良い。タブーは人間が社会を維持する上で都合が良いように作り出したものだ。ちょっと視点を変えれば何の問題もないのだ。という世間的には掟破りのアブノーマルが世間との間で引き起こす軋轢、ならばもっとぶっ飛んでも良かったのでは。途中、追ってきた刑事を殺すも死体はどう処理したのか等、突っ込み処多々あるも、リアリズムで突っ込んでも始まらない。これは近親相姦劇画なのだ。と原作は劇画と思ったら、桜庭一樹直木賞小説だそうな。

音楽、ジム・オルークアバンギャルドジャズ系? 合ってなくもない。でも私なら逆にシンプルなメロディを持ってくる。許しのメロディー。音楽だけが天上から二人を許すような。

最近外国人名前の日本人がいるが、この人はアメリカ人作曲家。同じ監督の「夏の終わり」も担当している。

奥尻の港、流氷が美しい。木村大作とはまた違った北の風景。監督は満島ひかりで「夏の終わり」を撮った人。役者はみんな良い。

監督 熊切和嘉  音楽 ジム・オルーク