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映画と映画の音楽  by  M・I

音楽を気にしながら映画を観る、そんな雑感

2015.11.3 「アメリカンドリーマー」シャンテ

2015.11.3 「アメリカンドリーマー」シャンテ

 

原題は「A Most Violent Year」、1981年、NYが最もヤバかった年の話である。

1970~80年代の「ゴッドファーザー」といったところか、それも少しカタギ寄りの。

イタリアかヒスパニックか、どちらかの移民、石油のトラック運送業でのし上がり,遂にNYを一望する海沿いに輸送基地を作る、という夢に手が届きそうになった主人公とその家族。しかし旧勢力がそれを許さない。旧勢力は本物のギャング、主人公はギャングとは関わらずにやってきた。これからはそういう時代じゃない。しかし警察にも検察にもギャングの息は掛かっている。次々に石油運搬トラックが強奪される。その単純で露骨なこと。あの頃は平気でまかり通っていたのだ。自分の身は自分で守る。これがアメリカの伝統、しかしこの主人公は配下のトラック運転手に銃の携帯を許さない。旧勢力に尽く邪魔され、最後は旧勢力の力を借りることによって石油運送基地という夢の実現を果たすという皮肉な終わり方をする。

ゴッドファーザーは直ぐ撃ち合って殺したが、この映画はほとんどピストルを撃たないし殺しもしない。ギリギリのところで踏み止まっている。そこがゴッドファーザーより息苦しい。息苦しい緊張感で最後まで引っ張っていく監督の力量は確かなものだとは思う。しかしユーモア皆無、カタルシス無し。観終わっての後味は悪い。かつてNYはこんなだったんだ、という感慨だけが残る。

音楽はほとんどSyn、サスペンスを煽る。今時のこの手の映画としては珍しく少ない。音楽を少なくし、現実音の演出でやったのは正解。息苦しさと緊張感は増した。既成曲のクレジットが沢山あったがそんなにあったか。エンドロールに変な歌。あれはオリジナルか既成曲か。

カーラジオから頻繁に流れるニュースは効果的な演出。

邦題「アメリカンドリーマー」はあまりに大袈裟過ぎる。アメリカンドリームはもっとデッカくて明るい。

監督 J・C・チャンダ―   音楽 アレックス・イーバート