映画と映画の音楽  by  M・I

音楽を気にしながら映画を観る、そんな雑感

2016.2.10 NHK土曜ドラマ「逃げる女」

2016.2.10 NHK土曜ドラマ「逃げる女」

 

TVドラマを取り上げる。このブログの趣旨に反するかもしれないが、お許しを。

NHKTV土曜ドラマ、1/9より始まった「逃げる女」。第一回は見損なった。第二回から観た。たまたまである。水野美紀主演、仲里依紗遠藤憲一田畑智子賀来賢人等個性的な役者が揃う。

養護施設の少年が殺されて、その犯人として捕まった水野、事件と同時刻に会った田畑の証言があれば無罪となるはずが、田畑は会っていないと証言。その為8年間刑務所に入った。冤罪と分かり出所、田畑を捜す為故郷の島原へ戻る。何故嘘をついたか、その訳を知りたい、その謎解きで話を引っ張る。そこにキレかかった仲里依紗が絡んで水野と一緒に旅をする。みんなそれぞれ過去にいわくを持つ。水野は先週あたりから決してみんなから好かれるような良い人間でなかったことが解り始める。仲里依紗は親からの虐待の過去、追う刑事の遠藤は妻との何か、みんな今の行動を見ただけでは解らない何かを背負っている。

そこに上野耕路の音楽が重なる。基本はPf、ボロンボロンと間のあるコードを弾く。それにVLのソロが被る、OBのメロが被る。みんな心の闇を持つことが暗示される。

3拍子の弦カルが入る。少し高いところから見下ろすような音楽である。

民族風の打楽器と弾く弦楽器の曲が変化を付ける。

エンドロールは女性のボーカリーズ、かと思ったらオンドマルトノというフランスの古い楽器とネットに書いてあった。オルガンとSynの初期折衷型楽器とでも言おうか。

シンプルな解りやすいメロがあるわけではない、かと言って無調ではない、よく聴けば優しいメロがある。これらがみんなが持つ“何か”を感じさせてくれる。この音楽がなかったらドラマは何の引っかかりもないものになっていた。

絵に合わせての音楽ではない、素材録りである、多分。それを選曲で充てている。この音効さん、的確に付けている。今風ベタベタではなく、でもTV、映画のように見る側に忍耐を求めるわけにもいかない。ほど良いところである。

上野耕路は良いドラマに巡り合えた。彼の作曲家としての良さがそのまま生きている。

それにしてもNHK、尖がっている。民放では有り得ないドラマである。しかもオリジナルだ。映像も良い。ロケが秀逸。

2/13 、22:00が最終回、ここで謎が一気に解ける。

脚本.鎌田敏夫  演出.黒崎博、中島由貴  音楽.上野耕路