映画と映画の音楽  by  M・I

音楽を気にしながら映画を観る、そんな雑感

2016.4.5 「百円の恋」 テアトル新宿

2016.4.5「百円の恋」テアトル新宿

 

安藤サクラ、日本アカデミー最優秀主演女優賞受賞凱旋記念と称しての上映。成程、安藤サクラで成立している映画である。

32歳のグウタラダメ女が、中年のこちらもダメ男 (新井浩文) に歳の割には可愛い恋をして、やる気を出してボクシングを始めるという話。ブクブク弛んで満足な縄跳びも出来ない女が、ボコボコに負けはするがリングで死闘を繰り広げるまでになるプロセスは見事。「レイジングブル」のデニーロである。

生き方が下手で他人とのコミュニケーションの取り方を知らない人間が、恋とボクシングを通じて社会との関わりを持てるようになる。よくある話だし、役者によっては臭い話になる。それを臭いどころか、いつの間にか頑張れと応援したくなる気にさせた、健気にさえ思えてしまう、そうさせた安藤はやはり大したもの。

音楽はブルース、良い。ただメロディがちょっと歌謡曲っぽい。それと時々大仰な男性コーラス (Syn?) が聴こえるのが気になった。かすれた口笛は良かった。

初試合、リングに向かう所、戴冠式の様な厳か壮大な音楽、あれは違和感あり。あそこは音楽無しでも良かった。試合が始まってからの多分同じ音楽、それは合っていた。

限られた予算と時間の中で良いカットを撮っていると思う。撮影健闘。演出も真っ当手堅い。

ローリングで流れた歌が、安藤が試合に上がる時のテーマだったのか。ジムの親父の、何だこれがお前のテーマか?  ええ、どうせ100円の云々。肝心のテーマという歌が良く聞こえない。台詞を聴き間違えたのかも知れない。聞き間違いでなかったら、もっとあの歌は聴こえるようにしなければ。それともあのシーンに合わなくて抑えたか…

 

監督 武正晴  音楽 海田庄吾 

主題歌 クリープハイプ「百八円の恋」