映画と映画の音楽  by  M・I

音楽を気にしながら映画を観る、そんな雑感

2016.6.18 「素敵なサプライズ ブリュッセルの奇妙な代理店」

2016.6.18「素敵なサプライズ ブリュッセルの奇妙な代理店」新宿ピカデリー

 

生きることに何の感動も感じない貴族の跡取りが自殺を試みるもどれも失敗、偶然知ったブリュッセルの自殺請負の代理店で、時間も場所も方法も知らされない、突然の事故に見せかけた死、という商品名「サプライズコース」を依頼する。ところがそこで同じコースを依頼に来ていた女性と恋に落ちてしまう。生きる理由が出来てしまった。しかし依頼の変更は利かない。「サプライズコース」の手を変え品を変えの攻撃をくぐり抜け…、というのが予告編。思わせぶりで良く出来ている。きっとカーチェイスあり、派手なアクションあり、手に汗握るハラハラドキドキのサスペンス、深くて重い「死」というテーマをエンタメのオブラートで包み、ウッディ・アレンのアメリカ的軽みとは違った、欧州の芳醇な知性が薫り立つ映画、と勝手に想像してしまった。ましてや尊厳死が認められているオランダの映画である。

題名にも騙された。「素敵なサプライズ」だけだったら見に行かなかった。「~ブリュッセルの奇妙な代理店」、これが「鑑定士と顔のない依頼人」を何故か連想してしまった。ロンドンでもパリでもローマでも行かなかっただろうなあ。勝手に想像した私が悪い。

話の筋はここで書く程もないくらい浅い。女性は代理店のサプライズ実行人だった。しかも代理店のインド人社長の養子で云々、どうでもよい小ネタが一杯。名車は出てくる。執事とのホロリとさせるエピソードはある。が、どれも取ってつけた様。最後はもちろんハッピーエンド。欧州の知性はどこにもなかった。あったのはご都合主義の浅いラブコメ・ストーリー、心に何にも響かず。但し不快感なく爽やかには纏めているので、時間つぶしには良いかも。

男・ヤーコブ (イェルーン・ファン・コーニングスブリュツヘ)、どう見ても美形ではないし、パンツになった時のモッコシだけが印象に残った。女性・アンネ (ジョルジナ・フェルバーン)は目玉ばかり大きく鼻は個性的、こちらも美形とは言えない。スタイルだけは良かった。

そして音楽。始まると同時にオケが絵面(えづら)動作に合わせてベタ付け。ミュージカルじゃあるまいしと思ったら、要所でクラシック、バッハ、モーツァルト、ヴィバルディ、それらを劇中音楽だけではなく、劇伴としても使う。かと思うとタンゴ (これは劇中のダンスシーンだが)、そしてオリジナルなのか女声のスキャットが入った曲。どう見ても全体の音楽設計が出来てない。その場その場での絵面動作合わせ。代理店の中ではシタールが鳴っていたなぁ。こういう映画こそきちんとテーマを決めて通せば良かったのに。

結論、予告編が良く出来ていた。邦題が上手かった。

 

監督.マイク・ファン・ディム  音楽.ブライアン・バーン