映画と映画の音楽  by  M・I

音楽を気にしながら映画を観る、そんな雑感

2017.06.26 「佐藤勝 音楽祭」、 7月30日に開催

2017.06.26「佐藤勝 音楽祭」、7月30日に開催

 

「佐藤勝音楽祭」が開催される。

佐藤勝(1928-1999)、今更言うまでもないが、日本の映画音楽の第一人者。黒澤明を始め、岡本喜八山田洋次山本薩夫等の作品を音楽で支え、組んだ監督100余人、作品数は300を超える。

佐藤先生は始めから映画音楽作曲家を目指した。純音楽(クラシック)の作曲家を目指した訳ではない。だからクラシックにコンプレックスが無い。当時、きちんとしたオケを書ける作曲家は大なり小なり、クラシックの作品を書こうと思っていた。それで楽壇から評価されたい。佐藤先生には全くそれが無かった。“俺は首根っこまでコマーシャリズムに浸かった作曲家だ”と平気で言っていた。

早坂文雄(1914-1955) の唯一の内弟子である。「七人の侍」の時は、早坂の下、外弟子(こんな言い方あるかな?) の武満徹(1930-1996)と机を並べてオーケストレーションを担った。外弟子の武満は何がしかのお小遣いを貰うも、俺には何にも無かったと言っていた。内弟子だから。

現代音楽の洗礼はしっかりと受けているのだ。ジャズの洗礼も。早坂は佐藤先生に、これからは映画に現代音楽を書きなさい、と言ったそうである。

現代音楽とジャズを消化しつつ明解なメロディーがあった。黒澤に鍛えられ、岡本とは様々な実験的試みをやった。マサル節と称される明解なメロディーを持ち、ひ弱な映像は負けてしまう。若手の監督がそれゆえに敬遠することもあった。しかしマサル節でどれくらいの映画が救われたことか。

一方、「若者たち」(作詞.藤田敏雄、歌.ザ・ブロードサイド・フォー) や「恋文」(作詞.吉田旺、歌.由紀さおり) などの歌も書いた。柔軟だった。

映画音楽の棒 (指揮) の名手でもあり、自分の書いたものは全て自分で振った。武満は映画音楽の録音の時、スケジュールが合う限り、佐藤先生に頼んでいた。この譜面のここからこっちの譜面のここに繋いで、それからこっちの譜面の…って、武満の時はいつもスコアが譜面台に載り切らないんだ、と言いながら見事に振っていた。前にも書いたが、武満徹映画音楽を一番理解していたのは佐藤先生だったのかも知れない。

7月30日、「幸せの黄色いハンカチ」(山田洋次作品)、「肉弾」「吶喊」「独立愚連隊」(岡本喜八作品)、「隠し砦の三悪人」「用心棒」「赤ひげ」(黒澤明作品)、「ゴジラの逆襲」「ゴジラの息子」「ゴジラ対メカゴジラ」等のオケものを演奏する。

マサル節が炸裂する。

 

詳細

「佐藤勝音楽祭」 指揮.松井慶太  演奏.オーケストラ・トリプティーク

7/30  13.30開場 14.00開演  渋谷区文化総合センター大和田さくらホール

チケット カンフェティチケットセンター 購入0120-240-640

問い合わせ 03-6228-1630   ¥7500~¥4000