映画と映画の音楽  by  M・I

音楽を気にしながら映画を観る、そんな雑感

2019.2.14 M・I グランプリ 2018

2019.2.14 M・I グランプリ 2018

 

昨年は邦画25本、洋画13本しか観ていない。これでグランプリを選ぶのは気が引ける。それでも僕が昨年劇場で観た映画、というカッコ付で敢えて強行する。評価の高かった「きみの鳥はうたえる」「孤狼の血「斬」等は未見。今年に入り「菊とギロチン」を観られたのは良かった。

 

音楽賞 世武裕子 「日日是好日」(拙ブログ2018.11.09)

しっかりとしたメロディを持つ映画音楽。しかもドラマの世界を冷静に見つめ距離を置いている。画面にきちんと合わせて付けられていて、動きの少ない映像に躍動感を与えている。世武裕子の個性が全面開花した。音楽家にも監督にも幸運な出会い。

 

作品賞 「万引き家族」(拙ブログ2018.7.02)

是枝監督は「海街ダイアリー」「そして父になる」あたりから作家性と商業性のバランスを上手く取るようになった。そのバランスが見事に結実した作品。今の日本の社会が抱える問題をしっかりと捉えつつ、エンタテイメント作品としても一級品と成し得た。この作品についてはビジネスの側からも作家性の側からも文句は出まい。今年の邦画の様々な性格を持つ映画賞の多くが集中するだろう。色々な考えの人が観ても感動する作品が映画の本流。捻ったものよりここは素直に本流の作品に賛辞を贈る。

 

監督賞 瀬々敬久 「菊とギロチン」(拙ブログ2019.2.02)

是枝監督と迷ったが、すでに海外も含め多くの賞を獲得しているので、ここは瀬々監督とする。長い間企画を温め、ついに実現にこぎ着けたという、その粘り強さも含めて。女相撲とギロチン社という水と油の様に見える素材を見事な力技で一つの骨太な作品に仕上げた。誰が見ても面白いエンタテイメント。公開が小規模なのが残念である。

友罪」も良い作品とのこと。未見なのが残念。

 

脚本賞 相澤虎之助 (空族) 、瀬々敬久 「菊とギロチン

空族という集団 (2人?) はどんな人たちなのだろう。音楽の知識が半端ないのは「バンコクナイツ」(拙ブログ2017.03.31) で証明済み。何よりその視点が日本を越えてアジアなのだ、それも極自然に。邦画をこんな視点で作る人たちを僕は他に知らない。相澤を脚本家として入れたことにより、「菊とギロチン」は国境を越えた映画になった。相澤を選んだ瀬々監督の選球眼が素晴らしい。

 

主演男優賞 該当者無し

敢えて言えば「万引き~」のリリーフランキーだが、リリーは「SCOOP」(拙ブログ2016.10.14)のチャラ源の方が僕は好きだ。

 

主演女優賞 門脇麦 「止められるか、俺たちを」(拙ブログ2018.10.15)

門脇が演じためぐみの様な女はあの頃確かにいた。あの時代を生きた者としてシンパシーを込めて門脇とする。次点は「日日是好日」の黒木華。「万引き~」の安藤サクラ

 

助演男優賞 新井浩文 「犬猿」(拙ブログ2018.2.24)

糞真面目な窪田正孝の、ムショ帰りの真逆の兄貴役。デリヘル嬢の間ではちょっと知られていると豪語する。それを新井は実際にやってしまった。“罪を憎んで人を憎まず”がこのケースに当てはまるかどうかは解らない。だが映画の公開見送り、出演作品のDVD化中止は、あまりに過剰反応だ。映画やドラマには刑務所帰りは沢山出演している。お裁き下った後の役者新井の復帰を熱烈に要望する。

犬猿」での柿の種入りチャーハンの、味に芯が出来た、を今でも思い出し笑いする。

それにしても良識ある世間様の同調圧力は一体何なんだ!

 

助演女優賞 樹木希林万引き家族」「日日是好日」「モリのいる場所」(拙ブログ2018.10.01)

寄せ集め家族の精神的支柱、お茶の先生、仙人の様な画家の妻、三者三様見事に演じて、しかもみんな樹木希林。演じてさっさと旅立ってしまった。もしこの人が居なかったら、三作とも成立しなかった。お見事!

 

新人男優賞

これと言った人、思いつかず。

 

新人女優賞 木竜麻生 「菊とギロチン」「鈴木家の嘘」(拙ブログ2018.11.29)

新人ではなく、主演女優にしようかと迷った。それくらい花菊に成り切っていた。良く見りゃ美形なのだが、田舎から逃げて来た、どこかもっさい感じを良く出していた。「鈴木家~」では兄の自殺を延々と語る長回しを見事に演じていた。文句なし。 

次点、「犬猿」の江上敬子(ニッチェ)。ブスで真面目な姉を演じて大したもの。経験を積めば良い役者になる。

 

外国映画賞 「スリービルボード」(拙ブログ2018.2.09)

脚本も演出も役者も、みんな良い。

 

イデア賞 「カメラを止めるな」(拙ブログ2018.8.27)

映画の撮影現場には面白いネタが一杯ある。ワンシーン・ワンカットの大変さを逆手にとって、それをドタバタゾンビ映画にしたアイデアには拍手。しかしここまで当たるとは…