映画と映画の音楽  by  M・I

音楽を気にしながら映画を観る、そんな雑感

2012.1.14「幕末太陽傳デジタルリマスター版」テアトル新宿 

2012.1.14「幕末太陽傳デジタルリマスター版」テアトル新宿 

 

何十年ぶりかの再会。やっぱり面白かった。

頭から黛敏郎のデキシーである。御殿山の脇に栄えた北品川特飲街。そこの幕末の物語。

高杉晋作始め勤皇の志士がたむろする遊郭。そこに現れる居残り佐平次、この落語から飛び出したフランキー堺の軽妙なボードビリアンぶりが見事。「品川心中」「お見立て」見る人が見れば、落語の元ネタはもっと良く解るはず。それを実に見事に脚本化している。今村昌平が脚本(田中啓一、川島雄三と共同)とチーフ助監督。

遊郭のセットも見事。1階から2階へ足元を移しながらワンカットで繫げるカメラワークも見事。猥雑な喧騒も、おそらくほとんど同録では。録音・橋本文雄さん。随分若かったのでは。大したもの。台詞は聞き取りにくいが。

そして音楽。さすがさすがの黛敏郎。頭と尻は軽快なデキシー。PB(プレイバック)の下座音楽。病(死)を抱えるフランキーの孤独にはオーボエでドビッシー風、ところにより無調の現代音楽。それらが何の違和感もなく画面に溶け込む。

テンポは軽快、今と全く違わない。あんな時代(昭和32年)にこんなテンポの映画があったなんて。川島雄三という人は何と言う人だったのだろう。

日活再開3周年記念とやら。みんな若くって、面白がってやっている様が目に浮かぶ。裕次郎のカツラが似合わないとか台詞が下手だとか、小林旭が演技以前とか、言ったところで始まらない。勢いで見せる。

小沢昭一(アバ金)、金子信雄岡田真澄市村俊幸南田洋子左幸子、そして我が芦川いづみ。懐かしい。亡くなってしまった人たちもワンサカ。

昔見た時、忘れられない台詞、“青い子出ておいで“ “男の身でお女郎のような真似はできません” をあらためて確認。シャレた脚本である。

軽妙洒脱とはまさにこの作品のこと。

監督 川島雄三  音楽 黛敏郎