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映画と映画の音楽  by  M・I

音楽を気にしながら映画を観る、そんな雑感

2012.2.28「おとなのけんか」シャンテ  

2012.2.28「おとなのけんか」シャンテ  

 

ポランスキーは自信があったのだろう。頭とお尻にロングで子供たちが公園で遊ぶ姿、それ以外はすべてNY中流のアパート、一室ではないが、リビング、台所、風呂、入り口、廊下、全てその中、出演者は四人だけ。

子供のけんかに初めは和やかに話し出す二組の夫婦、それが少しずつほころび、感情が露わになり、殴り合いこそ無いが、傷付け合い、和解の無いまま終わる。時に夫婦がいがみ合い、妻同志がぶつかり合ったかと思うと、同じ女同士で共同戦線を張ったり。戦線は目まぐるしく変化し、各自の内面が露呈する。

ここで暴かれるのはNYに住む中流の、おそらく民主党支持のリベラルと言われる人々の実態である。映画はこれを徹底的にオチョくる。場内に外国人(英語が解る人)が居て、我々が笑わない所でも爆笑していた。きっとネイティブには相当なオチョクリなのであろう。

元は戯曲。日本でもジョディ・フォスター役を大竹しのぶがやって上演しているらしい。シチュエーションはニール・サイモンに似ている。しかしN・サイモンには旅立ちがあった。この戯曲はオチョクリが目的で、各自に変化は訪れない。だからカタルシスはない。話はセックスに及ぶかと思ったが、そこには触れない。あくまで四人をオチョクルが暴きはしないのである。

戯曲をそのまま、撮影場所を一ヶ所に限定して映画としたのは、ポランスキーに自信があったからだろう。俺のテクニックでちゃんと見せ切ってやる!四人の役者は熱演だし、たしかに飽きることはない。しかし一時間半にも関らず生理的に限界だった。ローリングでカメラが外に出て、虫のアップが映った時にはホッとした。

音楽、アレキサンダー・デスプラ。頭とお尻だけ、なかなかの現代音楽を書いていた。才能のある人である。

監督.ロマン・ホランスキー 音楽.アレキサンダー・デスブラ