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映画と映画の音楽  by  M・I

音楽を気にしながら映画を観る、そんな雑感

2015.10.19 「バクマン」日劇マリオン

2015.10.19 「バクマン日劇マリオン

 

受験勉強もクラブ活動も何にもやらなかった高校生が漫画家になる話。原作は少年ジャンプ連載の漫画。ジャンプのコンセプト、「友情・努力・勝利」を踏まえつつ、成功、そして挫折、それを実写と漫画を上手く合成して映像テクニックを総動員して描く。それが実に内容と合っていて自然、編集もテンポ良い。

良い映画を観るとすべて適材適所見事なキャスティングに思えてしまう。公開前、佐藤健神木隆之介の役が逆ではということを宣伝ネタに使っていたが、原作を知らない者には実にピッタリと思えた。山田孝之はCMではないが、アクの強くない役もこなせる良い役者になった。染谷も桐谷も新井浩文クドカンリリーフランキーも、そしてヒロインの小松菜奈も、みんな良い。

そして音楽、サカナクション。バンド系を劇伴に使ってこんなに上手くいった例を知らない。EpfのソロやGのソロ、大体この辺が思い入れたっぷりにドラマに合わせたつもりでやるも、ただチープに聞こえるだけというのがこれまでの常。ところが違った。ただの動機の繰り返しのように見えてちょっとした小技もある。シーンを跨いで流れ小気味よくCO。あるいは途中にブレイクを入れてまた繰り返す。シーンに合わせてガラっと曲調楽器編成が変わる。みんな絵の方にそうする意味があるので違和感がない。かなり多く付いているが厚くないのでベタ付き感がない。所々に素を上手く使う。音楽と共に効果も絶妙、ペンのガリガリ音はキックに合わせてラップをやっている様。

音楽はどうやって作ったのか。当て書き? 選曲? あらゆる技術を使って丹念に充てていったのだろう。何度も作り直しをしたのだろう。監督の感性と粘りの成せる技である。

音楽が無かったらここまでテンポ良い流れにはなってなかった。テンポ良い編集と上手い充て方だったから音楽は生きた。両者の相乗効果。この感性、確実に我々の次の世代の感性である。新しぶってやる奴の大半は無様で私が学んだ従来の音付けの考え方でやり直した方が良くなると言い切れる。これは出来ない。この映画に従来の音付けの考え方は無意味である。

ついに人気投票一位獲得、このバックのEpf (確か) は、おめでとう!と盛り上げる曲調ではなかった。本来ならここは盛り上がりのピーク。けれど音楽はどちらかというと沈んでいて、二人の台詞と演技だけが喜びを表す。あれ? この外し方? すると次のシーンでその時をピークに人気が一気に下降したことが語られる。同じ音楽が前のシーンからづっと続く。喜びのピークと凋落は同じ音楽。音楽のズリ上がり。この辺上手いよなぁ。

まだ高校生、一度の挫折など一過性。ローリングはサカナクションの主題歌。これも自然。でも主題歌よりも劇伴の方が遥かに良かった。

この監督には映像と音楽が五分五分に存在している。どちらが主でも従でもない。

監督・大根仁 音楽・サカナクション