映画と映画の音楽  by  M・I

音楽を気にしながら映画を観る、そんな雑感

2016.3 . 1 「キャロル」 渋谷シネパレス

2016.3.1「キャロル」渋谷シネパレス

 

ケイト・ブランシェットルーニー・マーラ、この二人の女優の素晴らしさに尽きる。パトリシア・ハイスミスの自伝的(?)原作。1950年代のNY。上流社会に属するキャロルと写真家を目指す若きテレーズ、この二人の物語。二人は惹かれあう。キャロルにはちいさな娘がいるが、レズを理由に離婚訴訟を起こされている。レズは娘の母親として相応しくないが理由。テレーズは写真家を目指すも今はデパートの販売員。恋人に結婚を申し込まれているがその決心が出来ない。そんな二人がクリスマス直前のNYで出会う。お互いが “らしい” と感じつつ距離は縮まらない。手先が触れる、肩に手をのせる、それとなく探り合うデリケートさが良い。

娘と会うことを禁じられたキャロルはテレーズと車でクリスマスの旅をする。そこで二人は結ばれる。その描写は美しい。テレーズの華奢な体と綺麗な乳首は女にも男にもたまらない。ルーニー・マーラ、ちょっとオードリー・ヘプバーンに似ている。

男は、キャロルの夫もテレーズの彼氏もみんなつまらない者として描かれる。そうでもしなけりゃ、離婚やら彼氏を捨てるやら、さも有りなんという風にならない。この時代にレズを納得させるには男をダメに描くしかないのだ。

音楽は物語の展開に合わせ、マイナーのサスペンスで付けている。真っ当で格調高い。2音(ラドラドラド…)のフレーズを色んな音程で繰り返す。弦をバックに木管が主体、特にCla、NYに合う。久々にClaの中低域の音色を味わえる劇伴である。

当時のヒット曲がNYのクリスマスシーズンを伝える。

アメリカが自信に溢れていた時代、男は男らしく、女は女らしく、その裏でそこにコミット出来ないでいる人々。禁断の恋の炎は余計に盛り上がる。

同じ頃、ケルアックは「オンザロード」を旅していた。

監督 トッド・ヘインズ  音楽 カーター・バーウェル