映画と映画の音楽  by  M・I

音楽を気にしながら映画を観る、そんな雑感

2017.05.02 「午後八時の訪問者」 ヒューマントラスト有楽町

2017.05.02「午後八時の訪問者」ヒューマントラスト有楽町

 

フランスの地方都市 (?) の小さな診療所の若き女医ジェニー( (アデル・エネル) 、男の研修医と二人だけで運営する。怪我から心臓から認知症から、ありとあらゆる患者を診る。お金を持っている者も、そうでない者も。大学病院への話も蹴って奮闘する。フランス版女「赤ひげ」だ。

診療終了の8時を超えて鳴ったベルにドアを開けなかった。翌日その訪問者は死体となって発見された。ベルを押す訪問者の姿が防犯カメラに写されていた。若い女だった。女医に落ち度はない。警察も認める。女の身元は解らない。ドアを開ければ死なずにすんだ。ジェニーはその女が誰なのか知りたくて調べ始める。医者らしい手掛かりを見つけてその地区の人々の中に入っていく。移民が住む地区。そこでフランスの地方都市の移民の現実が暴かれて行く。

絶えず携帯が鳴る。患者は次々に来る。車を運転しながら携帯を通じて患者に連絡を取り、休む間もない、過酷な日々だ。調べる過程で麻薬の売人に脅されたりもする。

予告編では、医療倫理の根幹に関わる問題に突き当たるのかと思った。あるいは背後の巨大な悪が立ちはだかるのかと。どちらでもなかった。移民の現実というところで話は纏められた。それはそれでとってもリアルに描かれている。

小さな診療所は大変だし、移民の現実は厳しい。身元捜査のプロセスはそれなりにサスペンスフルである。しかし期待していたものより、本当に本当にこじんまりとした映画だった。

音楽は既成曲のみ、劇伴は無かった。ヘタな劇伴を付けたら作り物感が出てしまう。これは正しい。

 

監督  ジャン=ピエール・ダルデンヌ、 リュック・ダルデンヌ

音楽クレジット無し (不確か)