映画と映画の音楽  by  M・I

音楽を気にしながら映画を観る、そんな雑感

2017.05.08 「無限の住人」 丸の内ピカデリー

2017.05.08「無限の住人丸の内ピカデリー

 

三池ワールド全開。アバンでキムタクが無限の住人になった経緯がモノクロで語られる。コントラストを利かせた画面が黒澤時代劇を彷彿とさせる。「十三人の刺客」(2010) 以来、僕は黒澤時代劇を継ぐ者は三池ではないかと思っている。見せ方の上手さということで。

八百比丘尼 (山本陽子)に虫を注入され無限の住人になってしまった万次 (木村拓哉) が死ねないまま何十年かが過ぎ、今となったところで画面はカラーとなる。そこで凜 (杉咲花) の仇討ちの助っ人となるという話。話の深さや整合性を云々するものではない、死なない体のキムタクが切って切って切りまくる。役人だったり、悪役の集団・逸刀流だったり、凜に危害を加えようとする者をひたすら切りまくる。見渡す限りの屍、エキストラをケチる事なく盛大にやる。その面白さに尽きる。

黒澤にはしっかりとした脚本があった。話が良く出来ている。こちらは始めからそこには拘らない。立ち回りを繋ぐ程度のストーリー。

海老蔵が同じ虫を宿す者として数シーン出るが存在感は圧倒的、もっと絡むのかと思った。もったいない。戸田恵梨香はお色気担当で太もも露わ、見せ物に徹する。石橋蓮司田中泯もお決まりを成り切って演じている。福士蒼汰だけは若くアクが無いせいか、見せ物に徹してない感じだ。しかしこれだけの役者を揃えて見せ物だけではあまりに勿体無い。

音楽は、アクションの絵面に合わせてほぼベタ。しかし細かく付けている。所々に三味線か琵琶のような邦楽が入る。人声も入る。邦楽が洋楽劇伴にサンドイッチされて、でも違和感はない。上手く充てている。結構大変な作業だったのでは。映像をしっかりサポートする音楽である。

勝手なことを言えば、虫のシーンに音楽的工夫はできなかったか。それ以外にも、ディジュリドゥを使うとか、戦いを打楽器だけでやるとか、サムルノリ (韓国の打楽器集団)を使うとか、インドネシアとかタイとかの民族音楽を使うとか、人声で唸りとか声明とか、音楽もっと荒唐無稽に遊んでも良かったのではないか。こういうこと、三池作品でしか出来ない。

キムタクは相変わらずキムタクのマンマ。キムタクが片目潰して着物着て、キムタクのマンマ台詞を言う。偉大なるワンパターンはスターの証拠とも言えるが、そのカッコ良さにいささか飽きた。アクションでは本当に頑張っているのだが。

 

監督 三池崇史   音楽 遠藤浩二