2016.6.03「殿、利息でござる ! 」Tジョイ大泉
2016.6.03「殿、利息でござる ! 」Tジョイ大泉
ここの所「ボーダーライン」「レヴェナント」と重い映画が続いた。久々の気楽に楽しめる映画、ホッとする。何せ善人しき出てこない。話も全てにオチが付いて完璧、曖昧未消化は一つも無し。見事に予定調和。それでいて途中飽きることなく一気に観られて爽やか、職人技とは正にこういうこと。
仙台藩内の困窮した宿場吉岡宿、夜逃げが相次ぎ、このままでは宿場は立ち行かぬ。その原因の一つが経費労働共に持ち出しの荷役奉仕。大変な出費と労働、これさえなければということで旦那衆集まり、お金 (千両=3億円) を集め、それを藩に貸して利息を取り、それを荷役奉仕に充てようと考える。そんなこと出来るのか。原作は「武士の家計簿」の磯田道史。庶民目線の歴史を描く学者の原作。小説ではなく歴史書、信憑性は高い。儲かったものはそれを公の為に使わねばならぬ、資本主義の原点、マックス・ウェイバーである。見返りの無い投資を納得出来ない旦那やら、名誉欲にかられた旦那やら、身内の骨肉の争いやら、こちらも困窮する藩の財政を何とかしようとする武士やら、様々な困難を乗り越えて、遂に藩に認めさせ、宿場の反映は明治まで続いたという地方再生の成功譚。刀も抜かず打ち首も無し、一人くらい憎まれ役の悪党がいても良さそうなものを、藩主 (羽生結弦) までが浪費を反省して、全て善人ハッピーエンド。こんな映画久々である。
見えてる話をよくぞ揃えた適材適所の人気者で固めて飽きさせず。中村監督故に集まったとしか思えないスターたち。これぞ正しく監督の力。
中村義洋、メジャー作品をやりつつ、「アヒルと鴨のコインロッカー」(07)とか「ポテチ」(12) とか「みなさん、さようなら」(13) とか、自分の企画もしっかりやっている。だからこその賜物。
音楽、安川午朗。今回の安川はハマっていた。前半は、Cla、Fl、Fagの木管を中心にしたのんびりノリの音楽、リズムは入ってないが基本はゆったりジャズ。必要なところに的確に付けて、困窮しながらもどこかのんびり感のある田舎の宿場町とそこの善良な人々とシンクロする。後半はSaxも入りリズムも入ってくる。イイ感じである。シリアスにだって出来る話をそうならないように音楽が軽くする。最後の方で少し弦が入ったが大きい編成ではない。小編成の時の安川午朗は良い。
主題歌はRCサクセションの「上を向いて歩こう」、やっぱり清志郎は良い。映画にもピッタリ、良い選曲。
阿部サダオ、瑛太、西村雅彦、竹内結子、妻夫木聡、千葉雄大、みんな楽し気。常連の濱田岳はナレーション。頭とお尻に山崎努、中ほどに草笛光子、ちょっと出ただけで締まる。松田龍平は相変わらず松田龍平のマンマ、どんな役をやっても松田龍平のマンマ、それが通ってしまう。凄い存在感の役者になってきた。このまま行けるところまで行ってほしい。
ここのところメジャー作品ばかりやっている中村義洋、こそこそ自分の企画を見たいもの。