映画と映画の音楽  by  M・I

音楽を気にしながら映画を観る、そんな雑感

2019.5.07 「麻雀放浪記 2020」 渋谷TOEI

2019.5.07「麻雀放浪記2020」渋谷TOEI

 

阿佐田哲也の「麻雀放浪記」は夢中になって読んだ。和田誠の映画 (1984) も大好きである。高品格の出目徳は絶品だった。それが2020年にタイムスリップして甦るという。しかも監督は白石和彌、期待してしまった。

1945.11月、坊や哲 (斎藤工)、出目徳 (小松政夫)、ドサ健 (的場浩司)、女衒の達 (堀内正美) が大勝負をして、坊や哲が九蓮宝燈の五筒を積った瞬間雷が落ちてタイムスリップ。2020年、突然戦争が起きてTOKYOオリムピックが中止になった直後の浅草に五筒を握りしめたまま現れる。第二次大戦が終わって焼野原と化した東京、思いもよらぬ戦争でオリムピックが中止になった2020,年の東京、どちらも同じような状況と台詞で説明がある。でも2020年の東京、焼野原になっている訳ではない。焼野原になって放射能で汚染されているのかも知れないが、そういう映像はない。ひと気は少ないが浅草路地裏は今と大して変わらない日常である。「ブレードランナー」の様なビチャビチャとした路地ではなく、どこかのんびりした下町の路地。直前に戦争があった? あるいは今戦争中? そんな気配は微塵もない。

回想の1945年はチープなセットとCGだがそれなりの安物リアリティはある。2020年の舞台は言葉だけの説明。戦後のアナーキーを引き摺ってテンション高く登場した斎藤工、今がどういう時代かということが定まっていないから、本当の勝負をしたいというハイテンションは空回り。出会った麻雀メイド喫茶のドテ子 (チャランポランタン・もも) もマネージャー・クソ丸 (竹中直人) も熱演するも同じく空回り。

バーチャルリアリティーを使ったシマウマFACKとか幾つか笑えるアイデアはあるのだが何せ話のベースが出来ていないので単品のコントでしかない。

そして中止になったオリムピックに代わって世界麻雀大会である。

チープさと馬鹿馬鹿しさは嫌いではないが、このイイカゲンは楽しめなかった。

番組に穴が空いて急遽デッチ上げの企画か。火事場泥棒的瞬発力で、熟考した企画よりも生き生きとしたものが出来ることはある。今、邦画でそんな瞬発力を期待出来るのは東映だけかも知れない。しかも白石監督、ハチャメチャ珍品を期待したのだが…

まさかこれを長い間温めて来た企画なんていわないでしょうね。

ピエール瀧問題でクソ同調圧力に屈せず公開したことは良し。でも作品はちゃんと作らなくちゃ。

 

アンドロイド・ベッキーが良かった。演技以前のあのルックスが生きていた。エンドロールの後のターミネーターもどきのオマケ、あれはオッパイがバカッと開いて麻雀パイがパカパカ飛び出す位してほしかった。

ドテ子、初めははるな愛かと思った。熱演でありD級地下アイドルくらいの感じは出ていた。エンドロールでチャランポランタンのももと知って驚いた。「ゴジラ伝説ライブ」(拙ブログ2017.09.15参照) の時、モスラの妖精役を彼女たちがやっている。何度もステージでは見ているが、声とアコーディオンは解っていたが顔は認識していなかった。TVドラマにも出ているらしい。芝居経験はあったのか。今後役者もやっていくのだろうか。

 

音楽、映画を観てから大分経つのでほとんど記憶に残っていない。主題歌も同様。多分良くなかった? 良くない映画で音楽だけが良いなんてことはまず無い。

 

 

監督. 白石和彌   音楽. 牛尾憲輔   主題歌.CHAI