映画と映画の音楽  by  M・I

音楽を気にしながら映画を観る、そんな雑感

2016.9.14 「超高速! 参勤交代 リターンズ」 新宿ピカデリー

2016.9.14「超高速! 参勤交代 リターンズ」新宿ピカデリー

 

前作に引き続き、娯楽映画の王道を守って絶好調。話は単純、登場人物のキャラも上手く色分けされ、それに個性ある役者をはめれば、話は自動的に転がっていく。そう持って行った脚本監督は中々の職人だ。かつての娯楽時代劇映画をテンポアップして今風にリニューアルした痛快な映画、こういう映画、好きである。

藩主内藤役の佐々木蔵ノ介、財布を預かる西村雅彦、使い手の寺脇康文、料理上手な六角精児、猿と一緒の柄本時生、可愛い弓の達人知念侑季、小さな娘の手を引くさすらいの忍者伊原剛志、江戸詰めの上地雄輔七人の侍よろしく皆得意技を持っており、見せ場がある。将軍吉宗の市川猿之助大岡越前古田新太、悪役・陣内孝則渡辺裕之、みんな楽しそうに演じている。

紅一点のお咲役・深田恭子、久々のお姫様女優の誕生。女優数多居れど、文句なくお姫様を演じられるは深キョンを置いて無し。お姫様を演じられるのは私以外に無い! と深キョンは胸を張るべし。おっと忘れた富田靖子、とっても綺麗なおばさんになった。

いつもながら、今にも死にそうで死なない神戸浩(百姓)の台詞を聞くと何だか嬉しくなる。

目線はいつも民百姓と共にあり。藩主とは、つまりリーダーとは斯くあるべきという筋もしっかりと通る。

一万五千石にしては立派過ぎる城、将軍暗殺の企てといういささか粗っぽい筋立て、いとも簡単に城を乗っ取られた、エッ? 棺桶から転がり出た二人、いくら何でもバレるでしょう、突っ込み処多々あるも、それは無粋というもの。映画に辻褄合わず、話が無理、は付物。それを納得させてしまうのが演出。

 

音楽、周防義和、こんなにも映画音楽のツボを心得たかと感心した。弦、リズム帯、木管Perc、バンド系の人なのでアレンジはシンプル、それがこの映画に合っている。城の外観が映ったり、大きな政治向きのシーンには、スペクタクルで大仰な弦が格調を添える。いざ出発!となればリズム帯がなる。前作よりも増えた殺陣のアクションにもマリンバの入るリズム帯、どれもジャストで入りへんな溜めは作らない。明解で解りやすい。その上、一貫したテーマメロがしっかりとある。ちょっと民謡風というか和系のマイナー、でも決して重くも暗くもならない。このメロを上手く料理して内藤とお咲のラブシーンにも生かす。

カメラが悪党陣内に寄るとちゃんとFG(?) がメロを取ったりして、細かい合わせもやっている。かつての映画音楽の技法をテンポアップして今風にリニューアルした真っ当な映画音楽。こういう映画音楽は久々だ。

エンドロール、斉藤和義のロックは合わなくはないのだが、ちょっと浮いていたか。

考える映画も良いが、口開けて楽しめる映画も良いものだ。

時々入る猿のカットが絶妙。

 

監督.本木克英    音楽.周防義和   主題歌.斉藤和義